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     社長のブログ

ログハウス回顧録

 1982年の夏、カナダのログビルディングスクールでログハウス造りを学んだときの体験記


 目次
    第一部 …… カナダへの旅立ち
    第二部 …… 森の生活
    第三部 …… 森の先住者達
    第四部 …… B. Allan Mackie School of Log Building
    第五部 …… 偉大なるアラン・マッキー氏
    第六部 …… 極寒の地ロッキーマウンテンハウスへ
    第七部 ……
 カナダから次なる旅立ち

第一部 カナダへの旅立ち

 1982年8月、その後の自分の人生を大きく変える旅が始まる。大学を卒業した翌年、25才の夏である。私は、カナダ、ブリティッシュコロンビア州のプリンスジョージにあるアランマッキースクールオブログビィルディングにログハウスの勉強に行こうと思った。そもそものきっかけは、日本で目にした一冊の雑誌であった。もともとアウトドアスポーツを趣味に持ち、自然と触れ合うことが何よりも好きだった私は、学生の頃よりバックパッキングを愛し、夏休みを利用しては、北海道や九州の山へと出向いて行った。そんなことがこうじてか、大学在学中に考えていた卒業後の我が身の振り方も、カナダのアウトドアスクールに入学し、インストラクターの資格を取るというものであった。と言っても、入学して半年以上も海外に滞在するのであるから、必要最低限の資金が必要となる。もちろん、学生時代に稼いだアルバイト代は旅行費や、アウトドア用品に化けてしまっている訳で、ポケットからは、小銭位しか出てこない。と言うことは、日本でしばらく資金を貯めるために働かなくてはならない。いずれにしても、世の中そんなに甘くないということで、焦る気持ちとは裏腹に、最小限の石橋はたたいて渡らなくてはならない。世の中というものは、うまく仕組まれているようだ。
 若い頃は、手に入れたいものがあると、ついつい、焦ってしまい、すぐにでも手に入れたい、又は、到達したいという思いが強く、辛抱強く、一歩一歩、歩み寄っていくすべを知らない。そんな、もんもんとした日々を送りながら、一年と数ヶ月の月日が流れ、ようやくカナダへ渡航できる資金がたまる。一抹の不安と大きな期待を胸に秘め、25才の私は、大きなバックパックを背負い、レッドウィングのワークブーツで身を固めた装いで、カナダ、バンクーバーへと旅立つ。 初めて見る外国、初めて経験する異国での生活、これから訪れるプリンスジョージのログスクールもカナダから送ってもらったパンフレットの白黒写真でしか見たことがない。 どんなところなのかも想像不可能なのだ。ただ、 スクール申込書と一緒に入っていたスクール概要の中には、 “食事は自分で作れよ。寝袋は絶対忘れるなよ。”と書いてある。 そして、付け加えるように“途中でGIVE-UPしても、お金は返せない。”とも、 そんなすごい所なのだろうか。
 しかし、 想像豊かな私は、山の中での生活なのだろうと、内心、心を弾ませ喜んでいる。 おりしも、アメリカからアウトドアスポーツやナチュラリズムなスタイルが、 日本へ入り込んでいた矢先だったので、 自分もバックパッカーのバイブルとも言えるコリンフレッチャーの【遊歩大全】(コンプリートウォーカー)や、H.D.ソローの【森の生活】を、それはそれは大事に読んでいたものである。
 まもなく、バンクーバー空港に到着という機内アナウンスがある。 窓からは眼下にバンクーバーのダウンタウンを囲むように、北太平洋と美しい山々と森が見える。 胸がワクワクしてくるのを覚える。 しばらく、眺めていると、武者震いにも似た感動が湧いてくる。若者が大志を抱くときは、 かならず大なり小なり感動が生じる。 その感動が多ければ多いほど、 その若者は感性の豊かな人間に成長するのではないだろうか。たかだか、 15年しか経っていないが、最近の若者達に足りなくなっているのは、 感動ではないかと思える。 未知のことへトライする志と、それから生まれる感動や喜びが少なくなってきているのではないだろうか。 話は跳んでしまうが、 人に優しくなれるのも、その痛みを理解できる経験があるからだろうし、 同時に心が動くからではないだろうか。
 その機内からのバンクーバーの感動も束の間、飛行機が着陸した衝撃で我にかえる。 “本当にカナダに来てしまった。 さあ、これからが大変なんだ。”感動から緊張へと心の鼓動が変わる。 顔からも笑顔が消えているのが、自分でも分かる位緊張している。 周りの乗客たちを見ても、これから何が起こるかわからない旅に来ている人は、皆無のようだ。 日本人も多くいたが、留学中の学生や、カナダに住んでいる邦人、そして、普通の観光客ばかりである。 不安がつのる中、私の目は同胞はいないか機内を探している。一気に押し寄せてきた不安と淋しさが、仲間を一人でも見つけようと弱気になっている。
 プリンスジョージは、B.C.州バンクーバーから、やや北へ  1,000km程に位置する。 州最大の林業都市である。 バンクーバーから国内線に乗り換える。それこそ、周りの乗客は外国人ばかりである。 否、私が外国人なのだ。 中には、ディアハンティングに出かけるのであろうか迷彩服を着たヒゲ面が何人かいる。
 まもなく、プリンスジョージ空港へ到着だ。 バンクーバー上空の景色とは打って変わって、どこもかしこも、緑、緑、大森林地帯である。 空港ではアランマッキースクールの事務局長ガス・トリップ氏が、私を待ち受けてくれることになっている。本当に彼は迎えに来てくれているだろうか。 初めて合うガスさんに対して、英語でこう言おうと頭の中で英会話のシミュレーションをする。飛行機は着陸体勢に入り、 地上がみるみると近くなってくる。 さあ、憧れのマッキースクールへは、あと少しだ。 初めて会うガス氏はどんな人だろうと想像しながら、緊張のボルテージはさらに上がっていった。
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